「……大袈裟ね。これくらいの怪我、どってことないわよ」


 お金持ちが通うこの学園。校舎の中は綺麗に掃除が行き渡っている。家でもないのに使用人が働いている学園にはチリやホコリすら落ちていないほど、いつだってクリーンを保たれている。

 そんな中でこんなかすり傷一つ下くらい、どってことないと言うのが一般的な意見だ。けれど、私の意見を受け入れようとしないのがレグルスだ。


「そうやって甘く見ていると痛い目を見るぞ。そうやって人は、何事も後から後悔するんだぞ」


 ……倫理論? それとも哲学なの?

 どちらにせよ異論を唱える方が面倒だと思った私は、レグルスの言われるがまま、されるがまま、それを受け入れることにした。

 レグルスは相変わらず棚の中を開けたり、机の引き出しを覗き込んだりしている。その中から見つけた消毒液と包帯を持って私の隣に座った。


「ちょっと待って、レグルスがするの?」


 手当てなんてできるの? 正直レグルスって私に指示されて嫌々行動してた印象だけど、逆に言えば、そうされなかったらちょっと抜けてる感じの印象だったんだけど……?