「人の女王よ、まこと清き女王よ、この度のそなたの人生、大義であった」



「そうだ、あれだけの重圧をよく一人で生き抜いた」



「よく民草のために心を砕いてくれた」



「歓迎しよう、そなたは我々の領域へ足を踏み入れることが許された」



 その場にいたすべての神が拍手をした。何が起きているのかさっぱりわからないがいつまでも座ってはいられないとアリスタは立ち上がる。

 深紅の竜に手を三角形に合わせ、向かって深く頭を下げると竜は喉を鳴らして笑い始めた。



「頭など下げずともよい、人の子……アリスタよ」



「我が国の神よ、最高神オルフェーシュチよ、お見苦しい姿をお見せいたしました」



 宗教といっても絶対ではなく自由な信仰を推奨していたけれど生まれたときから王族だった彼女は普通の人間よりもはるかに信仰心の厚い敬虔な信徒であった。

 すべては神の思し召しだと、その神が与えたもう試練なのだと思い国の運営に努めてきたのだ。

 彼女の教典は字などほとんど読めないほどであったし、ロザリオはとても古いものだったのに破損の一つもなく綺麗に彼女自身の手で手入れをされていた。

 思いだして悲しくなる。その二つは目の前で燃やされたのだったと。