生まれ変わったのは少し離れた国の、といっても生活や文化ではそう大差ないほどの距離のとある王国で自分の身分は生まれながらの貴族籍であった。

 うすぼんやり開いた目からは太陽や反射するシャンデリアの光が見えて、水が残っているようなぼんやりした音で「旦那様!旦那様!」と駆け回る使用人の声が聞こえる。

 産湯に浸かりながら深く呼吸をし、生きているのだと実感が沸くと泣かずにはいられなかった。

 ひんひんと赤子特有の泣き声を上げるとメイドや産婆たちがあらあらまあまあと機嫌を取るために動き始める。



「奥様、愛らしい女の子でございます」



「そう、さあ、母に顔を見せてごらんなさい」



 ふうふうと息を整えている女性は若く美しくエメラルドの瞳を持っていた。

 陶器のような肌に濃い濡れ羽色の髪で、その髪も少しばかり乱れて汗で額に張り付いている。

 この人が私の母なのだとまじまじと見つめると、やはり母親は違うのねというメイドたちの会話が聞こえた。

 ああ今世の母、命がけで私を産み落としてくださりありがとう、この母に巡り合わせてくれた神々を思い出し母親の言葉に耳を傾ける。