『じゃ、いってくる…』
そう言って
右手を挙げてタクシーを
止めた圭佑さんを
見ていた 。
この人は
奥さんを知ってる……?
マンションで
フミさんの帰りを待つ…
そりゃそうか。
ずっと一緒にいたんだ。
全部知ってる。
知ってて
わたしにまで
気をつかわせてる。
申し訳ない気持ちで
いっぱいになった。
タクシーが止まり
乗り込もうとした
圭佑さんは
『あーもー!!!』
ガシガシと頭を掻いて
右手を差し出してくる。
「え、っと……はい?」
『やっぱ、
返して!!鍵!!』
少しバツが悪そうに
そう言ってきた。
けど…
「ううん」
その鍵を圭佑さんに
返すのは間違っている。
ずっと
間違えていたのは
きっと
「渡します」
わたしだから。
