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『柚っ!!』





こうして温和な日々が
流れていた中で

ふと、
あたしは呼び止められた。


『久しぶり』


あの日、
フミさんを拾ったあの日まで
付き合っていたカレ。


「……悠斗」


『話があるんだ』


「話?」


大学の敷地内でまた
悠斗と二人きりになるなんて
思っても見なかった。



そして、
こんなにも


「話って?」


緊張もドキドキも
しないなんて。



図書館の表にある
木陰にひっそりとあるベンチ。

そこまで悠斗の後ろを
黙ってついて歩いた。


話………





『柚ともう一度やり直したい』




彼はそう言った。



「…………え?」



『勝手なのはわかってる。
浮気なんて最低だし、
俺がすべて悪い。

柚は何もしてない。

何も悪くない。

だけどーー』


悠斗は今までみたことが
ないくらい真面目な顔をして


『俺、柚じゃないとダメなんだ』



そういった。
苦しそうに


顔を歪めて──





『柚が好きだ。


柚しかいない。


もう一度、
柚と一緒にいたい』




そんな言葉を聞かされた




あたしの頭の中には

優しい笑顔を浮かべた

フミさんしか






"柚ちゃん"


浮かんでこなかった───