かわいそう───
そんな言葉一つでは
片付けられなかった。
フミさんはすべてを失った。
だけど
生きていて良かったと
おもってくれた。
どうして
あの時死ななかった?
どうして
すべて消えてなくならなかった?
残ったのは身体だけ───
絶望のなかに一筋の光。
その光になりたい。
フミさんの希望になりたい。
"生きていて良かった"
『柚……ちゃん?』
あたしは無意識に
フミさんに抱き着いた。
「───温かい。
フミさん。
温かいです。」
フミさんの手を握る。
「生きてます。
記憶…なくても
フミさんは今ここにいる。
あたしは今までの
フミさんは何も知らない。
でも、
これからのフミさんは
知ることができます。
フミさんも。
フミさんもこれからの
フミさんを生きていけます。
ううん。
生きていってほしい」
あたしの手を
握りかえしたフミさんは
頭を優しく撫でてくれた。
優しくて温かいフミさんの手。
生きている証。
『ーーーあり、がとう…』
フミさんの声は
少し震えていた。