『考えすぎなのかな。
でもね、
そう。
柚ちゃんの言う通り。
怖いんだ。
すべてが、
怖い。』
無くなった記憶。
訪れる恐怖。
『気づいたら、
病室から飛び出してた。
着の身着のままで。
笑えるだろう?
こんなに寒いのに。
二ヶ月も意識がなくて
ベッドの上にいたから
病室にはコートもなくてね。
でも、
そんなことどうでも良かった。
早く行かなきゃ、早く、早く…
なぜだかすごく焦っていた。
急がなきゃいけないって
感じたんだ。
なんにも覚えてないのに……いや、
なんにも覚えてないからなのかな』
ゆっくりゆっくり
言葉を吐き出すフミさんは
すごく優しい顔をいていた。
逃げだすほど、
怖くて怖くて、
寒さも感じないほど
急いで焦って
「……今は、
怖くないですか?」
『え?』
逃げ着いた先が
あたしのところだった。
フミさんは一瞬驚いた顔をして、
すぐに微笑んだ。
「怖くないよ。全然。
さっきまでの焦燥感が嘘のようだ。
柚ちゃんに癒されてる…かな。
意識をとりもどして、
はじめて、
"良かった"と思えた。
ありがとう。』
生きていて良かった
ありがとう。
涙が溢れて、
フミさんが何重にもぼやけていた。
