フミスタ!!!





まぁ、

本当の名前なんか
今は必要ないとしても、


仮の名前は必要だ。

彼を呼ぶ時に困るし。
うんうん。



「フミさん」



『……ん?』



「ふふっ、フミさん」




『はい。ぷっ…』



クスクス





あたしたちは笑った。





悲しい傷を舐め合うように。


笑った。


彼の苦しみの理由…


知りたいな。


でも、聞かないほうが
いいのかな。

うん、きっとそう。


昨日までの記憶がないって




『二ヶ月意識がなかったんだ』



あたしの心の中を読んだかのように
フミさんは言った。



『事故だって。車に跳ねられたって』




「事故?」


『うん。まぁ、
それも覚えて無いんだよ。

目が覚めたらベッドの上でね。


体に色んな管がついてた。

そして、
次から次に知らない人が
入ってきたんだ。



父さんだよ、母さんだよ、
奥さんだよ、弟だよ、




ハハ…





知らない顔をした奴らが





そういうんだ』






フミさんは眉を下げた。


思い出したくないこと、
でも話さなければならないこと。


そう自分に言い聞かせているようで。


あたしは心が苦しくなって



笑っていった。




「いいんですよ。


話さなくて。


今日は。



まだ、いいんですよ。」





眠ろう。


眠っている間だけは、
すべて忘れてください。

疲れちゃうから。


壊れちゃうから。











『聞いてほしい』








そう言って顔をあげた。





「柚ちゃんに


聞いてほしいんだ。



ダメかな?』






まっすぐな瞳であたしに訴える。



だれかに



聞いてほしい。


一人では抱えきれないから


一人では破裂しそうなんだ。








あたしは


頷いた。




精一杯の笑顔を浮かべて。

涙が溢れる寸前の悪あがき。





正直、聞くのが少し怖かった。