フミスタ!!!






どれくらい
そうしていたのだろう。

時計が時を刻む音が
やけに耳に響く。


テーブルの上には
彼が外した

指輪がポツリと置かれてる。



この指輪を一緒に
付けているであろう相手は
今頃何をしているのだろう。


その彼女も同じように
苦しんでいるのだろうか。

彼を探し回って
いるのだろうか。


わかっている。



あたしは彼をその人のところに
帰さなくてはならない。

どんなに彼が苦しんでも、
彼と奥さんの問題だ。

ここはあたしが
余計なことをする場面ではない。




わかってる。


わかってるのに。



「帰りたく……ないですか?」



あたしは沈黙を破っていた。



「その人のところ」



『……………』





「お客様用の布団が一組あります」



いけないこと。


わかってる。



なのに、
どうしても突き放せなかった。



「数日、考えますか?」




あたしは悠斗と別れて、
弱っていたから。


きっと───


この人の悲しみや苦しみに


少し自分を重ねてしまったんだろう。




いや、

この人の背負っているものは
あたしが簡単に
理解してはいけないんだ。


そんな容易いものでは
ないのだから。




「今日は寝ましょうか。


明日は土曜日だし。
あたしも学校休みだから」



今日はじめて出逢った人。

そんな彼をなぜだか
助けてあげたかった。


あたしに話して欲しくなった。


苦しみを少しでも分かち合いたい


悲しみを取り除いてあげたい



なんて


思っていた。






あたしの腕の中で
小さくなって
うなだれていた彼は、



消えそうな声で




『…ありがとう』




と囁いた。