「隣県から引っ越してきた一ノ瀬 乃亜です。よろしくお願いします」





頭をぺこり、小さく下げればクラスにいた人たちが拍手をしてくれた。その様子を見て2-Aの担任の男教師が


「一ノ瀬さんは窓側の後ろの席なんだけど視力とか大丈夫かな?」


「大丈夫です。ありがとうございます」


席を教えてくれたから窓側の後ろの席まで歩く。
その間、クラス中の視線を感じながら


―――私、一ノ瀬 乃亜は自分で言うのも何だけど比較的容姿に恵まれている。


お臍あたりまであるサラサラな茶色の髪は地毛で枝毛一つないし、母から受け継いだ二重の大きな瞳に長いまつ毛。
白い肌も日焼けしらずだし体型だって骨格が華奢なおかげでちょっと食事の量を調整すれば細さもキープ出来る


よくある漫画みたいに天然無自覚な可愛い女の子とは違って、私は自覚済み


…17年間、自分の容姿と共にしてれば無自覚でいるなんて無理だと思う。


HRが終わった途端、クラスの人達が私の机の周りに群がってきた


「どの辺に引っ越してきたの?」
「その髪って地毛?」
「目がクリクリ〜」
「なんでこの時期に引越し?親の転勤とか?」
「ちょー可愛いっ」


一気に話しかけられても私、聖徳太子じゃないんだけど。
つーか、男も女も媚び売りすぎてキモい。でも今日は転校初日だしな…


頭の中でボロくそ言いつつどう答えるか悩んでいたら


「ねえ、邪魔なんだけど」


1人の女の子の声で質問攻めしてた人達が途端に口を閉じた。