「それでね、偶然女の先輩達が月島先輩のことを話してるのを聞いたって子がいるんだけど…」
一旦言葉を切って言い淀んだ結叶は、周りを気にするように見てからコソッと私の耳元で囁いた。
「───月島先輩、好きな人がいるって言ってたんだって」
……え。
月島先輩に……好きな、人……?
考えてもいなかった可能性に一瞬頭が真っ白になる。
でも……よく考えてみれば、別に月島先輩に好きな人がいたっておかしくはない。
大勢を振っていたのだって、きっとあまり恋愛とかそういうものに興味がないのかな、とか思っていたけれど、それはあくまで私の想像。
だって、先輩は自分のことをほとんど語らないし、断る時も“ごめん、無理”の一言だけで他にはなにも言わないらしい。



