「ど、どうして泣く!?
俺は何かマズイ事を言ったのか!?」
公衆の面前で泣かれてしまっては
社長も慌ててしまう。
「いえ…そうじゃなくて…」
”違う”と否定しても
溢れる涙は止まらず俯いてしまい
その様子から『修羅場なんじゃないのか』と
ご近所からの疑いの眼差しさえ
向けられる羽目になってしまった。
「と、とにかくだ。
お前は何も心配しなくていい。
全部終わったんだ」
「そう…なんですね」
「あぁ。
だから木瀬…
俺のところに戻って来い」
まっすぐ言われた愛の言葉に
イトカは涙しながらも満面の笑みで
『はい!』と頷いた。
その表情に
不意を突かれた社長は
彼女をそっと抱きしめて応える。
「好きだ」
と――――
抱きしめられた社長の腕の中で
イトカもまた、背中に手をまわして伝えた。
「はい。私もです」
”今度こそ離れない”とお互いの心に誓い
2人は見つめ合いキスを交わす―――
ご近所中からは
『怒ったりキスしたり何なの?』と
不思議に思われながらも
祝福の拍手を受ける事となった。



