―――運命の刻。


十数人の管理職員達が円形に座る会議室で
厳かに始まった総会。


「柴永代表。
 答えを聞かせてもらえますかね」


テーブルに両肘をつき
組んだ手に顎を載せた1人の中年男性が
最初に切り出した。


「初めからお伝えしているように
 私は社長の立場を退くつもりも
 他の方に譲るつもりも毛頭ありません」

「では、木瀬イトカという人物の解雇を―――」

「いいえ。
 解雇も婚約破棄もしません。
 追放等、以ての外」


冷静に顔色1つ変えないが
ハッキリとした口調で
キッパリ断固拒否する社長の発言に
その場にいる職員達がざわつき始めた。


「社長、何度もお話したように
 いくら貴方様でも
 そんな事が許させるはずないでしょう」

「庶民との婚約等
 社長だけでなく
 会社全体の名誉も損ねます。
 そうなれば手遅れです。
 社長だけの問題ではなくなるんですよ?」


口々に批判的な意見を
黙って聞いていた社長だったが
彼は静かに問い掛ける。


「では伺いますが
 今日まで彼女が何か悪い事をしましたか?
 この会社と私にとって
 今後どんな害をもたらしますか?」


その質問に
全員が口を閉ざしてしまった。