冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】


『そうだよな…』と
悲しげな表情で料理を見つめ
溜め息交じりにポツリと呟いた社長。

そんな顔をした彼を見るのは初めてで
複雑な思いばかりが募る。

『社長としての責務だ』くらいの
偉そうな発言を本人にしてしまったが
本当はイトカが1番
彼と離れる事を辛く悲しく思っていた。

だからこの決断は
想像していた以上に苦しいモノ。


「なぁ…
 1つ、聞いても良いか?」


悲しげな表情のまま
視線を料理からイトカへと移すと
小さく問い掛ける社長。

彼女は首を縦に振って応えた。


「お前は…俺が嫌いか?」

「え…?」

「勝手な判断で巻き込んだ事
 恨んでいるか?
 憎んで…いるか?」


社長の口から発せられた質問に
イトカは目を丸くしながら
思わず叫んだ。


「何バカな事を言っているんですか!?
 そんなワケないじゃないですか!!」


と…。

あまりの興奮に
社長に対して”バカ”だと言った事すら
気にも留めていなかったが
社長もそれに対して怒るどころか…


「それなら良かった。
 その気持ちで十分だ…」


驚くほど穏やかな表情で
素直だった―――