冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】


そんなイトカの姿に
社長は否定の言葉を口にする事を止め
静かに箸を置き彼女に問い掛けた。


「それを…
 ずっと考えていたのか?」

「…はい」

「そうか…
 俺はお前を苦しめていたんだな…」

「え…」


想像していた返答と違い
今度はイトカが驚いてしまう。


「婚約をすればお前を守れると…
 そう思っていた。
 それが1番良い答えなんだと…。
 けれど俺は
 自分の事ばかりだったな。
 お前の意見を聞かなかった」

「私は…」

「強制だったな。
 あの判断は、間違いだったんだ。
 今更だが…そう思っている。
 本当に申し訳ない」

「そんなのッ…」


頭を下げる社長に
『それは違う』と否定しようと思った。
…が、言えなかった。

確かにイトカ自身も初めは言われるまま
その方法しかないんだと承諾した事。


けれど一緒にいる時間が多くなりにつれ
少しずつ気持ちの変化が生じてきて
今は『こんな形でも良い』とさえ感じているのは事実。


だが、そんな事を言ってしまえば
尚更この人を傷つけて苦しませてしまうかもしれない。


だからイトカが出来る事はただ1つ。


「社長は社長のまま
 私ではなく、ココを守ってください。
 それが今アナタのするべき事です」


別れを告げる事だ。