冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】


『倒れたお前に言われても説得力がない』と
苦笑いを浮かべる社長は
少しだけ緊張が解れているように思えた。

そんな彼を見たら
余計に胸が痛んだ。


「食事も摂れないほど…
 悩んでいるんですね」

「悩む…か。
 どうなんだろうな…。
 いろいろと考えさせられてはいるけどな」


”考えさせられる”
その言葉で
”更に心身共に追い詰めて
追い込まれているんだ”と再認識させられ
だからイトカは
自分が今思っている率直な気持ちを伝える事にした。


「シバ社長…
 やっぱり私を…解雇してください」

「なッ…」

「私なんかを守るために
 社長が会社を離れてしまうのは、やっぱりおかしい。
 それもあんな男に乗っ取られるなんて…
 絶対ダメです」

「だからそれは――」

「それにッ」


止めようとする社長の言葉を遮って
イトカは続けた。


「もうコレ以上…
 私を守るために社長が苦しむのはイヤなんです。
 ボロボロになっていくのは…見たくない」


感情が高ぶっているせいか
目の奥に熱いものが込み上げて
気を緩めたら溢れてきそうだった。
泣くまいと抑えるのに必死で
それでも最後は涙声は誤魔化せない。