最初から金我によって
仕組まれたものに思えたから。


「私は先代を重んじている。
 しかし今の社長には興味も価値もない。
 今回の件は彼が自らの首を締めただけだ。
 地に堕ちた可哀想な御方だよ」

「そんな…」


次から次へと聞かされる
裏切りともとれる発言に
長い付き合いだった人物が
ずっとこんな事を思いながら近くにいたかと思うと
ゾッと寒気がしイトカは耳を塞ぎたかった。


「それに私は許せないのだよ。
 社長がキミみたいな小娘のために
 私をあんな大勢の前で侮辱したのだから。
 おかげで恥を掻いたよ」


この男が根に持っていたのは
何より先日のバーでプライドを貶された事だった。

金と名誉を気にする金我にとって
恥を掻いた事が着火剤であり
それが1番の原因、起爆装置にスイッチを入れたのだ。


「そんな勝手な理由で
 社長を追い込むなんて…」

「おや?
 口答えをするのかね?
 そんな事をすればどうなるか
 キミもわかっているはず。
 どちらにせよ
 柴永社長に残された選択肢は2つ。
 婚約を破棄しキミをこの街から追放するか
 代表取締役社長の座を降りるか。
 さて、お楽しみイベントの幕開けだ」


究極の選択を突きつけると
ショーの始まりのように楽しみながら
高らかに豪快な笑い声を響かせて
金我は去って行ってしまった―――