『はぁー…』と
深く重たい溜め息と共に
負の感情を吐き出すと
社長は部屋を出ずベッドの近くまで戻ってきた。


「忠告したはずだよな。
 あの男にだけは気をつけろと。
 危険だと言っただろ」

「…仰る通りです」

「お前は俺を信じず
 あの卑劣な男の言葉を信じた。
 どういう事かわかっているのか?」

「…はい」

「それも
 よりによってあの男の前で酒に酔い潰れるとは…」

「…すみません」


予想はしていたが
次々出てくる説教の言葉に
酒とは違う意味で頭と耳に痛い。


「そもそもどういうつもりであの男の元に行ったんだ。
 まさか気持ちが変わったなんて事…」

「そんなんじゃないッ!」


社長が言い終わる前に
イトカは遮って否定。

そんな誤解だけはされたくなかった。


「シバ社長と婚約したんだから
 ちゃんとした”妻”にならなきゃと思って…
 そしたら作法とか覚えないとな、と
 西園寺さんの教室に通いました…」

「・・・はあ?」


今晩一の驚きを見せる社長。
開いた口が塞がらない状態だ。


「まさか…
 たったそれだけの理由なのか?」


同時に呆然とした。