イトカの興味を示す手段として
手っ取り早く受け入れられる事が出来
上手く誘いに乗せるツールを見つけた西園寺。


「私の店と隣の呉服店で
 茶道や着付け、舞踊も教えていますので
 宜しければお教えしましょうか?」

「いいんですか!?
 ぜひ教えて頂きたいです!」


交じりっけのない素直な返事に
『いいですよ』と答えると
イトカは嬉しそうに純粋な笑顔を見せた。


「承知しました。
 あ、ですが…
 ”花嫁修業”なんて
 わざわざ柴永様に伝える必要のない事。
 くれぐれも本人には内密を。」

「え…あ、はい…」


そういうものなのかと不思議に思いながらも
西園寺の誘いを承諾。


「楽しみにしております、木瀬様」

「え…」


西園寺はイトカの右手を取ると
まるで”王子”の挨拶のように
軽く甲にキスを落とした。


思いも寄らない紳士的な彼の対応に
今までそんな扱いをされた事ないイトカは
心臓がドクンと高鳴り
率直に”カッコいい”とさえ思ってしまう。

そんな挨拶を済ませ
西園寺の後ろ姿を見送っていると…