「それはいったいどういう事でしょうか?」
「えーっと…
ちょっとイロイロありまして
婚約はしたんですが
結婚の話はまだと言うか…
ハッキリとしたプロポーズもまだと言うか…」
穏やかな表情で聞いていた西園寺だが
イトカの発言で内心では驚きと同時に
興味から”欲しい”衝動が強くなった。
「それでは…
まだ何も決まっていないと言う事ですね?」
ニコやかにそう聞くと
イトカは複雑な表情で『実はそうなんです…』と答えた。
彼女の曖昧さが引き金となり
西園寺は…
「では成婚が決まるまでに
花嫁修業が必要ですね」
”ある考え”を実行に移そうとしていた。
「花嫁修業…ですか?」
「はい。
柴永様は一流企業のトップ。
その御方の”妻”になるのであれば
何かと”作法”は身に着けるべきです」
「え、本当ですかッ」
「はい。
特にココは日本の良き文化を大切にしています。
茶道・舞踊等は出来て当たり前…
それなので…」
庶民であるイトカが
”知らない事実”を前提として
ほぼバカにしたような提案ではあるが
もっともらしい意見に素直に受け入れるしかなく。
「私、覚えたいです!」



