答えられない社長に対し
図星だと判断した西園寺は
更に追い打ちを掛ける。
「仮に私が木瀬様に手を出したとして
受け入れるかは彼女次第。
逆もまた然りで
私が何もしなかったとしても
彼女からの求めがあれば、それに応じるだけ」
「お前ッ」
「そういえば…
お店に来た時の木瀬様の御着物姿は
とても綺麗で魅力的でした。
長く見ていたくなりましたよ」
「言うな!やめろッ!
アイツにだけは手を出すなッ!」
思わず前のめりになりながら発した声は
西園寺も見た事のない焦りと苛立ちが感じられる。
「柴永様がそんな感情豊かな方だとは知りませんでした。
面白いモノを見せてもらいましたし
私はこの辺で失礼しますね」
社長の困惑に満足したのか
鋭い目つきから穏やかさへと表情は戻り
ニコニコしながら部屋を出ていったが
当の本人にとっては後味が悪い。
「あの男だけはッ」
イトカを西園寺に近付かせないために
社長も後を追い掛けた。
まるで逃げるウサギを食おうとする猛獣を
追う狩人のように…。



