(最近森田さん可愛くなってない?)
(垢抜けるってああいうこと言うんだな。マジで俺タイプかも)

やめろよ。そんな目で見んなよ。
あれは俺を誘う為の彼女の作戦だよ。
そんな風に周りの敵を睨みつつも、今日も華音を見つめている。

俺の運命の相手。それが彼女。
これは誰がなんと言おうと決まりきったことだ。
でも普通にアピールするだけでは面白くない。
なにか別の方法で彼女を振り向かせる方法は無いのだろうか。
俺は華音を運命の相手だと感じたその時からずっと考えていた。

出会いは俺の一目惚れだった。
コントラバスを演奏する友達を見にコンサートに誘われた。
別に音楽にも興味はないし、ましては友達の演奏も見たいわけじゃない。
でも、屈託のない笑顔で来てほしい!と頼まれたらそりゃ断れるわけがない。
そんな嫌嫌な気持ちで入ったコンサートの舞台の1番手前の列、
細く輝く銀色の横笛を華麗に操る綺麗な女の子がいた。
彼女は華奢で、可愛らしいのにステージの前に立って凛とした立姿でソロを演奏する。
その光景を目に焼き付けておくだけでは勿体ないと思い、写真に収めた。
その後、バレないように友達の写真も何枚か撮ったが。
そして終わった直後に友達の元に行き、彼女について詳しく聞いた。
別に結ばれたいなどとは思っていなかったが、俺は密かな憧れだと思っていた。
その代わりと言ってはなんだが、今まで全く興味のなかったクラシック音楽を聴くようになった。
頭は人よりも良かったため、知識として沢山取り込むことが出来た。

しかし、運命の時は突然現れた。
あのフルート奏者の女の子が、内定先の研修会に出席していた。
同い年ということは友達から聞いていたのだが、まさか就職先で同期になれるなんて。
これは運命だ、俺の頭がサイレンを鳴らした。

それからはずっと、彼女をどうやって振り向かせるかを仕事の合間に考える毎日だった。
仕事覚えが早い分、彼女をサポートするフリをして彼女との距離を近づけた。
川村くん、という風に認知してもらえ、
俺はずっと前から知っていた彼女の名前を改めて華音さんと呼ぶことにした。

それから彼女と接していくうえであることを思いついた。

___彼女から俺を誘ってくるように俺が彼女を誘おう。