確かに田中くんがぐいぐいくる間に、
いつも飲む規定量をオーバーするアルコールを摂取していて、
いつもよりも顔が熱い。

《森田さんは、誰のこと見てるんですか?》
「…私は、…」
『森田!田中!もうお開きだって言うから準備しなー!』
《…はーい!》

話を遮ったのは川村くんで、田中くんが離れた後にささっと私の方へ駆け寄ってきてくれた。

『華音さん、はい水』
「ありがとう」
『田中に何もされなかった?』
「、うん。ありがと川村くん」
『あいつ、手出すの早いって話だから田中のこと好きじゃないならあんまり近づいちゃダメだよ?』
「分かった、」
『行こう、タクシー呼んだから送ってく』

そう言って少しふらつく私の腕を取って店を出た。
既に先程まで一緒に飲んでいた団体は二次会へ向かっており、辺りは静寂に包まれていた。
タクシーに乗り込むと、川村くんは寝てていいよ?と優しい声をかけてくれる。
その言葉に甘えて、瞼を閉じ、再び目を覚ますと見慣れない部屋の中にいた。
そこに居たのは、ジャケットを脱ぎネクタイを解いた川村くん。

「川村、くん?」
『ごめん、寝てていいよと言ったものの、華音さんの家聞くの忘れてて…
 起こすのも申し訳ないと思って、その…俺の家に…』
「え、!本当にごめん!タクシー呼んでくれてお家に押しかけるなんてほんとに申し訳ないよ…」
『いや、お家に来てもらうのは全然よくて、!でもごめん。勝手に部屋に連れ込んだりして…』
「そんな、」

寧ろ少しラッキーなんて、思いの丈は口にも出せず。
『とりあえず、お茶入れるからゆっくりしてて?
あと姉ちゃんの服とかメイク落としとかあるから嫌じゃなかったら泊まっていって?』
「…ありがとう川村くん」
『じゃあ、先にシャワー浴びてくるね?』
「うん、」

シャワー、なんて言葉好きな人が発するとドキドキする。
まだふわふわした頭は下心でいっぱいだった。