私は恋愛経験などほとんど無くて、
どうしたら異性から意識して貰えるようになるか全く分からなかった。
ましてや、意中の人を射抜けるかなど、さっぱりだ。

『華音さん?』
「あぁ、ごめんなさい。どうしたの?」
『この資料、次の会議に使うやつだからと思って届けに来たんだけど、体調でも悪いの?』
「ううん、ちょっとぼーっとしてただけ」
『そっか、じゃあまた』
「うん、また」

モデルのような長身、爽やかな笑顔、そしてハイスペックなんて文句なしの同期に、
私は密かな恋心を抱いていた。
でも、周りには敵だらけで私なんかが到底叶う相手ではない。

(ねぇ、川村さんってあんなにかっこいいのに彼女いないんだって)
(自分に見合う女性じゃなきゃ付き合いたくないって感じなのかな?)
(でも川村さんの彼女になる条件とかハードル高そう、、、!)

給湯室から聞こえる後輩たちの噂話。
私はとてもじゃないけど彼女になどなれそうもない。
でも玉砕すると分かる前に、少しでもこの恋を経験して変わりたいと思った。

川村くんを理由にして、
女として、ステップアップしよう。
そう、決めたんだ。

まずは身なりから変えよう。
いつもはメガネをかけてのデスクワークが多かったから、コンタクトを処方しに眼科へ行った。
そして服装。
スカートとは言っても、シンプルなシャツにロングスカートというスタイルが多かったから、少し女性らしいオフィスカジュアルへと変化させた。

そして、恋愛マスターが教えるモテテク術なる本を何冊か買い、熟読した。

…ただ、一気にコーデも身なりも変えるとあからさますぎるので、
明日はコンタクトだけにして、モテテク術を少しずつ実践する計画にした。

___翌日。
(森田さん!メガネやめたんですか!
コンタクトの方が絶対いいですよ!)
(めちゃめちゃ可愛いです!明日からコンタクトで来てくださいね!)