静かな保健室で俺は暫く花井の寝顔を見ていた。
もう、花井を苦しめる腹痛はどっかへ飛んでいったのかなと考えながら。
もう少しだけ顔を近づけて見てみると、花井の寝顔は仔猫が寝ているようだった。
──不謹慎だな、こんな時に。
『寝顔、可愛すぎだろ』
俺は声を潜めて言った。
お前の睫毛ってこんなに長かったっけ。
俺、花井のことわかっているつもりでいたけれど。
俺は小さい時の花井も小学校の時の花井も全然知らなくて。
中学1年生の時の花井も知らなかった。
まだまだ俺の知らない花井がいる。
花井の体は俺が想像しているよりも軽かった。
その後保健室の先生が戻って来たのと入れ違いに俺は帰った。
家に帰り、自分の部屋にこもり、一番に花井から受け取ったあの封筒の中身を確認した。



