私は終始恥ずかしくて仁の顔を直視できず、ずっとうつむいて話をしていた。
好きな人、仁に決まってる。
そんなに簡単に言えたら苦労はしない。
本人を目の前にして本当の私の気持ちなんて言えるわけがなかった。
だから、私はやっぱり素直になれず。
「名前を全部平仮名になおして。名前の中に平仮名の“だ”が入っている人」
小学校の時に好きだった人の“だ”を言った。
私が頭の中で想像をしたのは本田 涼、私が昔好きだった人。
「“だ”って、俺も名前の中に入っているけど。もしかして、俺?」
あっ、本当だ、二人とも“だ”が入ってる……。
そうだよ。って素直にそのまま言えば仁になる。
違う。って言えば……そのまま違う人になる。
「…………………………」
仁と目線を合わせたくなくて。
赤面状態で黙ってずっと下をうつむいていた。
すると突然、仁が顔を近づけて下から覗き込み「おーいっ、聞こえてる?」って聞いてきたものだから、
私は「わぁっ!?」と驚いて顔をあげた。
息がうまく吸えなくなって。
心臓が一瞬ドキンとして。
突然キスでもされるんじゃないかと思うぐらい本当に際どい距離で驚いた。
私は直ぐに下をうつむいた。
私は頭が真っ白になった。
私、素直じゃないから……、
泣きそうな声で
「小学校の時に好きだった人の名前」って言った。
言った後、凄く後悔をした。
「そいつ、中学校の時にもしかして学校いた?」
仁の声のトーンが少し低く変わるのがわかった。
「うん、いたよ」
私は冷静を装う。



