〜天音side〜

うるさいほど耳に入ってくる蝉の鳴き声。校舎の出口から出て来た瞬間耳を塞ぎたくなった。
日直だった、いや、日直を押し付けられた私は他の生徒より10分ほど遅れて校舎を出た。
私は浜名天音。ごく普通の田舎の中学3年生だ。
もう9月になったというのに外はまだまだ暑い。
「暑いなぁ。早く帰ろっと。」
誰もいない自転車小屋に向かいながら呟く。
今月は体育祭や、期末テストなどやることがたくさんあって疲れがかなり溜まっていたため自転車で家に帰るのですら苦痛だ。
今日はクラスのやたら絡んだり、いじめてきたりする子に日直を押し付けられ、帰るのが遅くなってしまったため昼寝は出来ない。いつもは早めに帰って20分ほどの昼寝をするのだが、いつもより遅くに帰るのだからそんな時間はない。帰ったら即勉強。これが受験生の日々。

ガチャン

自転車のストッパーを外し立ち漕ぎで家に急ぐ。
私は自転車に乗っている時間がなんとなく好きだ。吹いてくる風は涼しいし、時々雨が降ってきたりすると
パタパタと肌に落ちてくる雫の感触。夏の晴れた日に肌をジリジリと容赦なく焦がす太陽。全部が好きだ。
家に帰っても、学校に来てもやることは一緒。勉強。ずっと勉強勉強勉強だ。
いつになったらこの生きてる意味もない、コピー機のようなただ人に言われたことをこなすだけの人生から解放されるのか。答えは分からない。まず、そんな日がくるのかも分からない。
こんな人生、早いとこ終わらせよっかな。