「君ほど心を惹かれる人はいない。だからこうして何度も会いに行くんだ。……この想いをこの花に託すよ」

俺は持ってきた花束を彼女に渡す。紫色の派手な色をした美しい花。彼女に相応しいと思って選んだ花だ。

「この花は?」

ジュリエットは花束を手にし、ジッと花を見つめる。俺は「ブーゲンビリアだよ」と答えて彼女の肩にそっと腕を回した。出会った当初は頬を叩かれたこの行為も、今では彼女は何も言わない。

「ジュリエットはこんな花、たくさん他の男からも貰ってるんだろ?」

「そうね。百本のバラの花束をこの前はもらったわ」

ブーゲンビリアの香りを楽しみながらジュリエットは言う。残念ながら、平民には百本のバラの花束は財布の中身が寂しくなりそうだよ。

「ジュリエットはバラの花の方が好き?」

俺が訊ねると、ジュリエットは「いいえ」と答える。そして俺を見上げて言った。

「あ、あんたがくれる花なら……どんな花でも受け取るわよ……」