ベルガモの棘

彼女を、

粟野まりを気になるのに

そう時間はかからなかった。

彼女は仕事の飲み込みが早く、

またミスも少ない。

しかも持ち前の明るさと愛嬌で

皆から好かれている。

営業部の男性社員でも

彼女に好意を寄せている話をよく聞く。

もちろん俺もその内の1人だった。

今日は新入社員歓迎会だ。

朝、沙織は珍しく俺に話しかけてきた。

【最近帰ってくるのが遅いけど、もしかして不倫でもしてるんじゃないの?】

まさか俺がする訳がない。

営業部は今とても忙しい時期だというのに

不倫と勘違いするのか。
 
そう聞いた沙織も不倫をしている。

そんなにあの男が良いのか。

俺が不倫をしていれば

それを口実に離婚するつもりだろう。

俺じゃ沙織を幸せに出来ないのか。
 
俺は朝からイラつきと悲しみで

押し潰されそうになった。

"あぁ早く今すぐにでも粟野に会いたい"

ふと浮かんだ感情

俺も沙織と変わらないのだろうか...