ベルガモの棘

彼は奥さんとの出逢いを聞かせてくれた。

彼の奥さんとは恋愛結婚ではなく、

親同士が決めたお見合いで

出逢ったらしい。

その時にはもう、

奥さんには婚約をしている人がいたのだが

猛反対をされ結婚を諦めたそうだ。

しかし、

結婚しても

恋心を忘れられないのだろうか。

婚約をしていた人と

何度も会っているのだという。

今日もその彼と会っているので

家には帰ってきていない。

私はその話を聞いた時、

"私なら絶対にそんな思いをさせない"

と強く思った。

「私に何か出来ることはありませんか?」

考えるよりも前に

その言葉が出ていた。

彼の力になりたかったんだ。

『大丈夫だ。心配かけてごめんな』

彼はそう言ったけど、

とても大丈夫そうには

見えなかった。 

"抱きしめたい"

その思いが強くなり

私は彼を抱きしめた。

彼は驚きを隠せずにいた。

「私が部長を笑顔にします。だから...
もう少し傍にいても良いですか...?」

彼は長い間考えた後、

私を抱きしめ返してくれた。