ベルガモの棘

「部長、キスしたいです...」

上目遣いでこの言葉を言われ、
 
もう我慢も限界になった

チュッ

俺は彼女に軽いキスをした

照れているのか

彼女は顔が赤くなり下を向いていた

なんて愛らしいんだろう

そんな事を考えていると

もう一度キスをしたいと言われた

俺だってしたい

その時だった

視界の端には、朝なかったはずの

"ベルガモの花"

が飾られていた

ベルガモの花言葉は...


昔、接待の相手が

花言葉をよく知っている人だった事がある

なので俺も、

覚えるのを手伝ってくれた沙織も

花言葉にはとても詳しい

このベルガモの花を飾っているのは

朝の口論が関係あるのだろう

"禁断の恋"か...

彼女は俺からの返事を待っている

彼女に触れたい

その気持ちは変わらない

でも、

俺のこの中途半端な気持ちで近づくのは

絶対にしてはいけない事だと思った

自分勝手で最低だと思う

でも彼女を巻き込むのはもっと駄目だ

俺は彼女からのキスを断った

俺の言葉を聞き、

今にも泣きそうな顔をしていた

慰めたい

だが俺にはその資格がない

本当に俺は最低だ...

ただ彼女の後ろ姿しか見れない俺

君に何をしてあげられるのだろう...