「あっそうだっ!

お義姉さん、私の結婚式の時の服、私に選ばせてくれない?」


いきなり両手をパンっと合わせて、杏花さんは言った。
あまりの勢いにちょっと仰け反りながら、私は答える。

「うん、いいよ?

新調するつもりだったから、もし今から杏花さんの時間があったら、買いに行く?」



───それから気合いを入れ直し、私の体型でも入る、素敵な服のお店を何軒もはしごして、杏花さんが『絶対これ!!』と推したワンピースを購入することになった。

アクセサリー、靴と揃えて結構なお値段になったが、試着から戻ってバッグから財布を出す前に、杏花さんが払ってしまっていた!

「ちょっと杏花さん、それはダメだよ!

自分のだし、自分で払うよ勿論!」

私は慌てて言ったが、杏花さんはニヤリと笑って一言。

「いいの、これ修兄のお金だから。
お義姉さんに、服をプレゼントしたかったんだって!

やぁねぇ、やらしーんだから!!」


ニヤニヤ笑っている杏花さん。

『男が女に服を贈るのは、その服を脱がせたいから』なんていう話、確かに聞いたことはある。
でも、自分がそういう対象になるなんて、想像もしてなくて。

思わず赤面してアワアワしてると、ラッピングが終わって大きな紙袋を渡された。

いかん、支払いが有耶無耶になってしまった!


「お金、後で修兄に返すとか、無しにしてね、お義姉さん」

ちょっと真面目な顔で、杏花さんが言った。

まさにそう思っていた私は、グッと詰まってしまう。

「修兄は、お義姉さんに色々してあげたくて仕方ないの。

服のプレゼントもそうだし、デートでも色々考えてるでしょ?

とにかく、お義姉さんを喜ばせて、笑顔ていて欲しいからだよ。
お義姉さんのことが、大好きだから。

もし、申し訳ないって思うんなら、満面の笑顔で『ありがとう』って言ってあげて。

それが、修兄には一番のご褒美だから」