~side 修一~
「おめでとうございます!」
ふにゃあ、ふにゃぁと、生まれたばかりの娘が精一杯の声で泣いている。
是非ともと立ち会った出産。
こんな痛い、苦しい思いをして、母親が子どもを産むのだと、実感をもって初めて知った。
俺たちの娘を、10ヶ月以上お腹で育んでくれた都は、荒い息を吐きながら、やっと産まれた娘を胸に抱いている。
カンガルーケアと言うらしい。
生まれてすぐ、少しの間、母親が赤ちゃんを胸に抱く。
その、達成感と、嬉しさの混ざった笑顔は、本当に神々しいほどで。
娘と共にある都の姿は、一枚の絵画のよう。
感動でぼーっとしていると、赤ちゃんは色々処置をされて、俺のところに来た。
「どうぞ、『お父さん』、抱いてあげてください」
50代くらいの看護師さんが、慣れた手つきで俺に娘を抱かせた。
おっかなびっくりで抱く俺は、腕の中の小さな命を、その確かな重みを感じる。
ふわぁ、と欠伸をして、彼女は俺の方を見た。
見えてないのは分かっているけど、確かに目が合ったような気がした。
心が、震える。
この命を、守るのだと。
目の奥が熱くなるけど、男の意地で涙を押し留めた。
都の方を見ると、こっちを見て微笑んでいる。
きっと俺は、泣き笑いの顔をしているんだろう。
自然と出てきた言葉は。
「ーーーーありがとう」
fin.



