〜side 都〜
軽く触れるだけのキス。
ーー長っ!
私が抗議する直前に唇を離して悪戯っぽく笑った修一さんは、間違いなく確信犯だ。
もう、困った人。
軽く睨んで、でもすぐに笑いあう。
「結婚証明書にサインを」
牧師様の案内で、2人でサインする。
少し手が震えて変な字になったけど、それもまた良いね。
牧師様は、会場に証明書を向けて宣言した。
「今、2人は夫婦となりました」
何人か、『おめでとう‼︎』と叫んでくれて、拍手が巻き起こる。
修一さんが、私の手をそっと握った。
微笑み合って、会場の方を向く。
見渡すと、親戚や友達、会社の人達の、祝福の顔に混じって、切なそうな槇原さんを見つけた。
ーーー私に、こんな風に思われたくはないだろうけど。
ーー貴女にも、幸せが訪れますようにーー
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
〜side 修一〜
都をエスコートして、祭壇の前から退場していく。
皆、見て。
俺の嫁さんだ。
子どものように得意満面で、見せつけるようにゆっくりと歩く。
都は、滅多に履かない踵の高い靴を履いた自分に配慮してくれていると思ってるだろうけど。
そんな綺麗なもんじゃないんだ。
勿論、それもゆっくり歩く理由の一つではあるけど。
どうだ、羨ましいだろう?
この人が隣にいると、俺はいつだって幸せなんだ。
会場の出口で振り返って一礼するまで、俺はそんなことばかり考えていたーー



