~side 都~
私の宣誓を、少し泣きそうに歪んだ表情で受け取ってくれた修一さん。
牧師様とアイコンタクトをして、自分の宣誓書を受け取る。
そして、いつもより少し緊張したような、固さの混じる声で、宣誓を始めた。
「私、三上 修一は、この命のある限り、どんな困難にあっても妻 都だけを愛し、誰よりも何よりも大切にし、二人で幸せになるために全力を尽くすことを誓います」
……片手で宣誓書を持っているから、両手で顔を覆うことができない。
溢れ出る涙が、頬を濡らす。
介添えも兼ねる川端さんが、そっとハンカチを差し出してくれたので、目元を何度も押さえた。
続く牧師様の聖書の朗読の間に何とか涙を止めて、『病めるときも...』という誓いの言葉に、しっかりと『誓います』と答えることができた。
牧師様に促されて、お互いにサインしてある宣誓書を交換すると、「今の気持ちを大切に、良き夫婦となられてください」と言われた。
二人して同時に『はい』と返事をして、微笑みあう。
宣誓書を牧師様に預けると、指輪の交換を促された。
二人で決めたのは、内側にお互いの誕生石が埋め込んであるプラチナのシンプルなもの。
『いつも傍にいるよ』という意味で、このデザインにした。
私が左手の手袋を外すと、すぐに修一さんの左手が迎えに来て、優しく引き寄せられる。
薬指の奥まで指輪を進めると、修一さんは悪戯っぽく笑った。
「もう、外せないよ?諦めてね」
私はぷぅ、と膨れて拗ねたふり。
サッとリングピローから修一さんの指輪を取ると、グイッと薬指の奥に押し込んだ。
「修一さんこそです!もう外しちゃダメなんだよ!!」
「外すわけない。都の隣に居れる権利は、誰にも譲れないな」
澄まして答える修一さんに、噴き出してしまう。
「---誓いのキスを」
牧師様が、ふざけ合う私たちを促した。
ーーもう、参列者は見えていなかった。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
〜side 修一〜
ヴェール越しの都も綺麗だったが、ゆっくりとヴェールを上げて、直接眸を潤ませた目に見上げられると、背筋がゾクゾクとした。
今日は、何度この多幸感を味わえば良いのだろう。
上質なワインに酔ったような、ふわふわした気持ちに、少し戸惑う。
だから、それを、確かなものに。
都の肩に手を置いて、照れたように頬を染める彼女の唇に、そっと唇を重ねた。



