〜side 都〜
『結婚式』の写真を残したかったので、前撮りは敢えてしなかった。
当日忙しくなるのは分かっていたけど。
今日、この日が、私の特別。
式の前に、修一さんと二人の写真を撮ることになっている。
式が終わってから、親族皆で撮影する。
軽くフェイスマッサージをしてくれたメイクさんは、私に向かって自信満々の笑みを浮かべた。
「最高に幸せな花嫁さんに仕上げますよ!
私は技術、お客様は表情ね!
協力して頑張りましょう‼︎」
言い方が面白くて、思わず声を上げて笑ってしまった。ヘアメイクの打ち合わせの時も、とてもいい提案をしてもらった。
私は、今日、最高に綺麗になれる。
注目を浴びることに慣れていない自分に、魔法(暗示)をかけて。
☆ ☆ ☆
〜side 修一〜
都の準備の方が、どうしても長くなるのは分かっていたから、都より一時間半ほど遅く準備に入った。
服を着替え、髪を整えてもらって。
年甲斐もなく、ドキドキしている自分がいる。
今日、この日。
やっと結婚式に至った安心感と。
これからずっと一緒にいることができる幸福感と。
都と、いずれ生まれてくるだろう子どもを守る責任感と。
期待と気負いで、子どもの頃のように気持ちが昂っている。
ーーーいいな、これ。
この重さが、幸せの実感なんだと、改めて思う。
「新婦様のご準備できましたので、新郎様は撮影室にお越しください」
控室に呼びに来た担当プランナーの川端さんに連れられ、写真撮影用のスペースに入ると、後姿の都。
肌を露出しない清楚なドレス。
少しだけ見える項と後毛に、ドキッとする。
「修一さん、どうかな?」
振り返って照れ臭そうに微笑む、俺の『奥さん』。
その幸せそうな表情に、息を呑む。
3秒ほど見惚れて、無理矢理口を動かした
「綺麗だよ…凄く」
やっと出てきた言葉は、あまりにもありふれていて、嫌になる。
でも、他に何も言えなくて。
ーーーああ、俺は感動してるんだ。
そのままの間抜けな表情で、写真を撮ったと思う。
夢見心地は、俺の方ーーー



