笑われたことで、ちょっとムッとしたけど。
次の言葉で、霧散してしまった。

「えへへ、嬉しいです。
ヤキモチは、私の専売特許かと思ってました」

俺はパッと顔を上げて、都の眸を見た。
決まり悪そうな俺が映る眸は、柔らかく笑んでいる。

「この際だから言っちゃいますけど、私いっつもハラハラしてるんですよ?

私より素敵な人はたくさん居るから、他の女の人を見ないで〜って思っちゃう。

嫉妬深い私は嫌いですか?」

俺は素早く首を横に振る。

「いや、嬉しい」

…ドヤ顔で言ってしまった自信がある。

「ふふっ、同じですね」

——見事だ。

見事に、俺の機嫌は急上昇する。

ああ、俺はきっとずっと都に敵わない。

でも、やられっぱなしは癪に触る。

「じゃ、ヤキモチ妬かせたお詫びをしてよ」

悪戯っぽく言うと、都も乗ってきて、何がいいか尋ねてくれる。

「ずっと前からお願いしてること。

もう、敬語無しで話してほしい。夫婦になるんだから」

ニヤリと笑いながら言うと、都はうっと言葉に詰まった。

「こ…れでも、努力はしてるんですが…」

「ダメ、全然直ってない。
男友達の方がよっぽど親しげって、どういうこと?!」

ほら、正論でしょう?
だから、もう諦めて。

都は、ふぅ、と、溜息をついた。

「わかった、気をつける。
…これで良い?」

ああ!もちろん。

そして、真っ赤なその表情、絶対にほかの男に見せては駄目だよ。

この表情は、俺だけの都。


耳元で、甘く囁いて。
更に赤くなる都を堪能する。


暫くそうしてから、ゆっくり手を繋いで大通りへ戻る。

何だか心がポカポカと暖かい。
嫉妬のような、一般的に醜いと言われる感情も、俺達を幸せにしてくれるのだ。

そんな事を考えながら黙って歩いていると、徐に都が呟いた。