楽しい時間は、あっという間に過ぎて。

俺も、都の友達とそれなりに打ち解けることができた頃、会はお開きになった。

集まってくれた皆に心ばかりのお礼の品を渡して、一人ひとりに挨拶をして。
俺達は駅へ向かって歩き出した。

「お疲れ様でした、修一さん。

皆に囲まれてましたけど、大丈夫でしたか?」

早速心配そうに聞く都。
俺は、そっと手を取り、恋人繋ぎで握った。

「都の昔の話や、面白い話を聞けて楽しかったよ」

クスクス笑いながら言うと、『あいつら、まさか余計な事を…』と、物騒な呟きが聞こえる。

「『みやっちを大事にしてくれ』だって」

「え?」

「大事にしてくれって、頼まれただけ。
いい友達を待ってるね」

俺は、甘く、優しく、呟く。
……でもね。

少し強引に、都を細い路地に引き込んだ。
そのまま、ぎゅっと抱きしめる。

「しっ、修一さんっ?!」

グリグリと都の肩に額を押し付ける。

都は、戸惑いつつも様子のおかしい俺の背中に手を添えてくれる。

「どうしました?
嫌なこと言われたりされたりしました?」

心配そうな声。
俺は額を押し付けたまま、首を振った。

「違う。皆いい人ばかりだった。

……うー……」

言いたくない。
決して、言いたくないのだが!

都だから、甘えられる。
そういうことに、しておこう!!

「……嫉妬した」

「え?」

「だから、ヤキモチ焼いたんだって!

皆、恋愛じゃないって分かってるけど、都のこと大好きだから。

モヤモヤしただけ!」

小声だけれども、半ば叫ぶように言うと、都は一瞬言葉を詰まらせた後、ふふっと笑って俺を抱きしめた。