家に帰った私は、修一さんの好きなハンバーグをメインにした夕食の準備をした。

歩き回って微妙に疲れたので、先にお風呂をいただいてからリビングでストレッチしていると、いつもより少し遅めに修一さんが帰って来た。


「ただいま、都」

ちょっと疲れたような、落ちたトーンで、元気なく微笑む。

どうしたんだろうと思いつつも、「お帰りなさい」と声をかけつつ近寄ると、そのまま手を引かれ、修一さんの胸にぎゅっと抱き込まれた。

私は驚いて声をかける。

「修一さん?どうしたんですか?
何か嫌なことでもありました?」

そう言うと、修一さんは、更に力を込めて私を抱き締めた。

「──杏花から、聞いた」

耳元で、切ない声。
──しまった、口止めを忘れてた。

「ごめん、都を追い詰めてた。

杏花に叱られたよ。
『好きなようにしたらいい』は、『無関心』と同じだって。

俺の我儘で急いで結婚するから、せめて式の内容は、都の希望を最優先しようと思っていたんだ。
誤解させてごめん。

丸投げするつもりじゃなかったんだ」

本当に申し訳なさそうに、修一さんは言う。

私は、修一さんに回した手で、ぽんぽんと背中を叩いた。

「わかってます。修一さんが、私を最優先にしてくれていること。

修一さんが追い詰めてるんじゃないんです。
私が私を追い詰めてるの。

──修一さんに嫌われたくなくて、ついつい完璧を求めちゃいますね」

私の声にも苦笑が滲む。

間違ってた。
本当は、杏花さんではなくて、修一さんと話すべきことだった。

ちゃんと、私の言葉で修一さんに伝えなくては。
決意を込めて、口を開いた。

「私ね、一生独りでいるつもりだったでしょう?

だから、結婚式って、よくわからないんです。

友達の結婚式には何度も行きましたが、それを自分に重ねたこともなくて。

だから、杏花さんに『結婚式で、どんな修一さんを見たいか』って言われて、凄くしっくりきたんです。

もしよければ、修一さんが『どんな私を見たいか』で、イメージを膨らませてもいいですか?」


修一さんの胸から顔を上げて、私を見ていた修一さんの眸を見る。

修一さんの表情は、申し訳なさそうな感じから愛おしそうな笑顔へと変わる。


「──もちろん!喜んで!!」