シンと静まる空間のどこか遠くで、微かに扉が閉まる音がした後、自販機の機械的な音だけが耳につき、その沈黙に耐えきれず口を開いた。

『…関君、あの』
『悪かったな』

偶然にも互いの声が重なってしまう。

『え?』
『今回の件、お前の気持ちも考えず、一方的に決めつけ過ぎた』
『ううん、私の方こそ』
『いや』

関君は、近くにあった自販機に背を預けると、突き当りにある大きめの窓の外を眺めながら、バツが悪そうに話しだす。

『実は昨日、お前が去った後、高崎さんに叱られた』
『高崎さんに?』
『ああ。俺のこの態度や言動が、倉沢を不安にさせるんだって。俺的には、結構分かりやすい方だと思うんだが、傍からみたらどうも分かりづらいらしい』

関君の自己分析の誤認識はともかく、知らない間にあった援護に驚くも、さっき聞いたばかりの真実で関君が何も疚しいことなどないことを知ってる今は、どうにも心苦しく感じてしまう。

『私だって状況も考えずに、ホント馬鹿げてるよね…ごめん』
『落合が話したらしいが、俺と落合は何もない』
『うん、わかってる。関君が、私を気遣ってくれてたのも聞いたし』
『なんだ…随分聞き分けが良いな』
『だって、何も無かったんでしょう?』
『当たり前だ』
『なら、私は関君を信じるよ』

そうハッキリと断言すると、何故か関君は眉間に皺を寄せて、考え込むそぶりを見せる。