『でも意外だったわね、関君の方が…えっと…何て言ったっけ?男性の方の…』
『簑島未来君?』
『あ~そうそう、その未来君の方だと思ってたのに』

紗季が上手にスプーンとフォークを使って、明太子のパスタを束ねると、丁寧に口へ運ぶ。

『落合さんの方が、関君が携わってる財務会計に役立つ資格をたくさん持ってるみたい。それに、公認会計士の資格も取りたいって、勉強中みたいだし』
『それ凄いじゃない!』

驚く紗季に、ランチにセットでついていたアイスティーを口にしてから、改めて落合さんの優秀さを話す。

『関君も教え甲斐があるみたい。彼女のこと、物覚えがずば抜けて早いって褒めてたもん』
『ねぇ…ところで、彼女って可愛い系?』
『どうだろう?可愛い…っていうよりは、美人系かな?』
『朱音…それ、大丈夫なの?』
『ん?何が?』
『関君の心変わり、とか』
『まさか』

一笑すれば、紗季が持ってたスプーンを口元に当て、前のめりになって真顔で言う。

『だって、関君が女性を褒めるって、そうそう無いよ』
『褒めるって…別に、女性としてって訳じゃ…』
『甘いわよ、大学出たばかりの右も左もわからない若い女子に頼られまくって、男は絶対悪い気しないもの』

何故か確信を持って、断言される。