会議室を出て通路に出れば、昼間の喧騒が嘘のように、シンと静まり返った社屋内。

この時刻にもなれば、最低限の照明以外は落とされていているせいか、暦の上ではまだかろうじて夏なのに、妙にヒンヤリと感じる。

廃棄文書を処理するシュレッターくらいは、近くにある部署でもあるだろうけれど、誰もいない他部署内に入っていく勇気も無く、結局少し離れた自分達の執務室に向かう。

いつもの見慣れたブースにたどり着くと、先ずは持ってきた廃棄文書の束を丁寧にシュレッターに落とし込む。

あれだけの量のデータ入力の割に、廃棄数はそこまで多くは無かった。

いかに皆の…ううん、関君の入力にミスがないということなのかもしれない。

他にも言われたいくつかの片付けを終え、会議室に戻る途中、未来君の為に…と言われた珈琲を入れるために給湯室に寄るも、既に珈琲サーバーも落ちていて、今から立ち上げて入れても、相当な時間がかかってしまう。

『仕方ない。自販機で買うか…』

諦めて執務室を後にすると、細長い通路を真っすぐ進み、昨日の朝、関君と落合さんの会話を立ち聞きしてしまった小ホールにでた。

鳴りを潜めて隠れていた柱の裏側に廻り、そこに現れた小さな脇道を曲がると、その数メートル先に設けられた、休憩スペースにたどり着く。

突き当りに嵌め込み式のガラス窓があるだけのデットスペースを利用したそこは、飲み物だけじゃなく、ちょっとした軽食やお菓子の自販機がいくつも並び、その前には長椅子が2脚、等間隔に置いてある。