『関君のこと?』
『あ、聞こえちゃいました?だって、凄くないですか?僕の倍以上のデータ入力してて、ほとんどミスなしですよ』
『まぁ関君…だからね』
『……あれじゃ、敵うわけ無い』
『ん?』

未来君の口から自然にこぼれ落ちた言葉に、ほんの少し驚いた。

『もしかして未来君、関君を超えようとしてる?』
『えっ、まさか』
『ちょっと意外な気もするけど…うん。目標は高い方が良いよね』
『いやいや、無いっすよ。ソレ本当に誤解ですからっ』
『そっかぁ…未来君が、関君をねぇ…』
『だから違いますって、朱音さん』

何故か、顔を赤らめて焦る未来君が可笑しくて、思わず揶揄ってしまった。

ある意味全く正反対な関君に、未来君が尊敬や憧れを持つとは、本当に少し予想外だったから。

『倉沢』

不意に名前を呼ばれ、その声の主をみるも、未だ背を向けたまま振り返る気配すらない。

『手が空いてるなら、そろそろ不要なものを片付けてくれないか。散らばってる廃棄文書もシュレッダーを頼む』
『えっもう?』
『俺の分のデータ入力はほとんど終わってる。ついでに、どうも集中力が欠落してきたらしい簑島のために、濃い目の珈琲を入れてやってくれ』

その言葉に、思わず隣の未来君をみれば、バツが悪そうに苦笑し、口パクで”すみません”と謝罪の言葉をかけてくる。