時刻は、もう10分もすれば、22時。

入社以来、残業は何度もあったけれど、こんな時間までいたことなど初めて。

営業などの他部署では、まだ何人かの社員が残っているところがありそうだけれど、事務職ばかりが集まっているこの2階フロアで残っているのは、今はもう私たちだけのよう。

あれから、時間通り30分で戻った未来君も含め、落合さんが手配してくれた小会議室に集まった私たち4人は、関君が立てた業務分担に従って、すぐに作業にとりかかった。

主に、今日のスケジュールを強引に空けてくれた関君と未来君が、資料のデータや表の入力を担い、落合さんはそれを基にレイアウトなどの編集作業。

私はといえば、一番最後の仕上げに、校閲を行いながらそこで修正が必要なものの手直しをするという流れ。

ただし、未来君はともかく、関君も落合さんもそうそうミスすることもなく、私の担う仕事など、ほとんど無いに等しかった。

『う~、腰痛くなってきたぁ…』

未来君が隣で腕を伸ばして、大きく身を逸らす。

『ずっと同じ姿勢だからね、時々伸ばした方が良いよ』
『単に姿勢が悪いだけでしょ』
『何だよ落合、冷たいなぁ』

斜め前で作業していた落合さんが、冷ややかな視線を未来君に送る。