『倉沢。この量を今から半日で、お前ら二人だけで、本気でできるとでも思ってるのか?』
『それは…やってみなきゃわからないでしょ』
『…やってみなきゃわからない?』

関君の冷ややかな声が、私のセリフを反芻した。

『まさか、やってみて間に合わなかったら、須賀に”悪かった””ごめん”で済むとでも思ってる訳じゃないだろうな』
『そ、そんなことは…』
『言っておくが、俺はお前や簑島の為に手を貸すんじゃない。俺達と共に3年目で”営業”としての評価が問われている須賀の為に、協力するだけだ』

もう一度、須賀君が用意した大量の資料に視線を戻す。

『この資料も相当気合入ってる。先週末、福岡での活躍も目の当たりにして、アイツの努力をみすみす無にしたくはない』

関君の正論過ぎる言葉に、返す言葉が出てこない。

『朱音さん、関さん達の力を借りましょう』
『未来君』
『そもそも俺…いや、自分が悪いんです。僕のせいで須賀さんの仕事に支障をきたすとか、絶対にしたくない。だから僕は、関さんでも落合でも、この際誰の力でも貸してもらいたいです!』

未来君に諭され、いつの間にか物事の本質を忘れて、意地になっていた自分に気付く。

優先的に捉えるべきなのは、依頼主である須賀君主催の会議が、滞りなく行われること。

更に願わくば、その会議で彼の評価が上がるようなものが出来ることが、一番望ましい。

悔しいけれどその為には、関君達の”高い知識と能力”が必要だった。

『簑島の方が、数段大人だな』
『……』

関君の口から零れ出た呟きに、何も返せずグッと押し黙るしかない。