しばらくの間、黙って手にした資料に目を通すと、後ろに控える落合さんに声をかけた。

『落合、今日の午後のスケジュールはどうなってる』
『はい。これから14:00に財務の定例ミーティングが入ってます。その後、15:00に部長面談、16:00から国際事業部の会議にオブザーバーとして呼ばれています』

まるで関君の秘書の如く、持っていた電子手帳をサッと開き、単調に読みあげる落合さん。

続けて、そんな落合さんに、関君が指示を出す。

『ミーテングは欠席の連絡を、面談は別日で再調整する。国際事業部の会議には…落合、お前が俺の代理で参加するように。それと、悪いが小会議室を一部屋手配しておいてくれ』
『わかりました』

そう言うや否や、落合さんは踵を返し、直ぐに言われた通りの行動を起こす。

『あの、関さん?これは…』
『簑島、お前は先ずその服をさっさと着替えて来い。室内は外と違って身体を冷やす。替えの服が無いなら俺が貸してやる』
『え…でも…』

未来君はどう答えたら良いのか分からず、救いを求めるように私を見る。

『関君』

意を決して話しかければ、未だ視線は資料に向いたまま『なんだ』と、返答があった。

『これは、どういうこと?』
『須賀の会議資料のデータ化は、俺と落合が手を貸す』
『私、別に頼んでないよ』
『ああ。先を読んで、手詰まりになる前に手を貸すことにした』
『なっ…手詰まりって。馬鹿にしないでっ!これは私と簑島君が請け負った案件でしょ。関君たちには関係ない』

ピシャリと言い放てば、やっと資料から目を放し、顔を上げてこちらを見た。