この日、関君と同じように今日から出勤すると思っていた落合さんは、有給休暇。

聞けば、週末から体調を崩していたらしく、今日まで大事をとってお休みするとのこと。

関君はといえば、予想どうり机の上の大量なメモを精査し、業務の優先順位を鑑みて、これから各課に出向くつもりのよう。

こんな時、知識もスキルも無い自分は、すぐ目の前の席にいるのに何の役にも立たない。

それこそ落合さんがいたなら、関君の力になることなど容易くできるに違いないのに…。


『関、ちょっと良いか』


ちょうど関君が、他課に向かうべく書類をまとめて席を立った時、川越主任が総務の内山さんを連れてやってきた。

出がけに足止めを喰らう形になり、少々不機嫌そうな表情を見せる、関君。

『今からいくつかの部署を廻らなきゃいけないので、用件なら手短にお願いします』
『あ~うんうん、そうだなよな。昨日いなかった分、そりゃ忙しいよな…』

主任は、言い出しにくいことなのか、後ろに控える内山さんをチラリと見てから、

『実は…例の土曜日の件、なんだが…』
『関君!ごめんなさいっ』

主任が最後まで言い切る前に、早々に謝罪をしたのは後ろにいた内山さんの方で、言葉と同時に深々と頭まで下げている。

『その件でしたら、もう気にしないでください』
『ううん、全然良くないよ。こんなミス、本来許されないもの。本当に申し訳ない』

内山さんは自分の両手をぎゅっと握りしめたまま、心痛な面持ちで、謝罪を繰り返す。