週明け、執務室に向かう長い廊下で、3日ぶりの関君を発見。

『おはよう!関君』

後ろから声をかければ、一瞬こちらに視線を寄こし、短い挨拶だけすれば、足も止めずに直ぐ逸らされる。

『出張、お疲れ様。どうだった?福岡』

すかさず隣に並び、めげずに話しかけた。

『ああ、展示会は盛況だった』
『あ~うん、まぁそれもそうなんだけど、ほら折角の福岡だし、向こうで美味しい物とか食べたかなぁって…』
『倉沢』

唐突に名を呼ばれ、立ち止まる関君。

『俺たちは遊びに行ったわけじゃない』
『ん?それはもちろん、わかってるよ?』

キョトンと見上げれば、小さく息を吐き、明らかに呆れた顔をされる。

『まぁいい、ほら』

執務室の手前で、手に持っていた紙袋を渡される。

中身を見れば、お土産らしき福岡の銘菓がいくつも入っていた。

『私に?…にしては、量が多すぎるような…』
『馬鹿、課のみんなに決まってるだろ』
『あ~…だよね』
『悪いが適当に配ってくれないか』

個人的なお土産でないことに、若干テンションが下がるものの、関君からお願いされることなどほぼない自分にとっては、こんなことだけでも単純にも嬉しくなる。

『うん、わかった。後で皆に配っておくね』
『…ところで、倉沢』
『ん?』
『昨日、俺達のことで何か…』
『昨日?』
『いや…何でもない』

関君は一瞬何かを口にしかけて、直ぐに口を噤んでしまう。

執務時刻も迫り、関君との会話は一旦そこで中断され、ちょうど声をかけてきた同僚と一緒に執務室に入っていく。

関君が口にした”俺達”とは、【関君と私】…のことだろうか?

それとも、週末一緒に出張に行った、【関君と落合さん】のこと?

中途半端に終えた会話が、何だかモヤモヤと、心の片隅にに引っかかった。