そういう関君は、こんな人ごみの中でも、その類まれなる容姿のせいで目立っていて、こちらが迷子になったとしても、直ぐに見つけ出すことができそうだ。

『朱音』
『ん?』
『どこでも良いから、俺に掴まっておけよ』

隣に並ぶ関君が、歩きやすいように距離のあった互いの間隔を少し縮め、自分の上着の裾を持ちやすいようにして言う。

ひどく淡々と、それはまるで感情が籠ってないような声で。

『うん』

今はもう、そのぶっきらぼうな優しさが、たまらなく愛おしい。



――――7月の初旬。


関君と、初めて過ごす本格的な夏が始まった。