『ん…美味しい』
『本当?』
『はい…私には少し甘いですが』
『あ、ごめん、私甘党で。シロップ入れる前に分ければ良かったね』
『いえ、疲れている時は、これくらいの方が美味しいです』

いつも笑顔を見せない彼女が、甘めに作ったカフェオレのせいか、一瞬フッと笑みを浮かべる。

その偶然みせた、自然の笑みに、思わずドキリとしてしまう。

大人っぽい彼女の中にある、あどけない一面。

関君にも、この笑顔を見せたりするのだろうか…?

『倉沢さん?』
『あ、ううん…それより、どう?仕事はもう慣れた?』
『はい。関さんのご指導のおかげで、だいぶ』
『そっか、さすが関君だね』
『…関さんは、本当に凄い方です…』

中央のテーブルに備わっている低めのスツールに腰をかけ、向かい側に座る形になった彼女は、自分のサポートをしている関君について誇らしげに語る。

『知らないことなど一つもないみたいに、私の質問や疑問にも、その場ですぐに適切な回答をいただけますし。皆さんに頼られるのも、納得です』
『…関君、仕事にストイック過ぎて、厳しくない?』
『いえ。私も仕事にはあれぐらいストイックでいたいので、全然大丈夫です』

派手さの無い薄化粧にも拘らず、そうきっぱりと言葉にする彼女はハッとするほど美しい。

仕事に対するその考え方も、”できるだけ楽しくもらってるお給料分だけちゃんとできていればいいや”と思っている自分とはかけ離れ、なんだか恥ずかしくなる。